基準が明確ではない概念の理解が、苦手な傾向にある発達障害の子どもたちにとって、プログラミングは学びやすいという側面があります。プログラミングとは、コンピューターに的確な指示を出して、指示通りにコンピューターを動かすことです。コンピューターは指示通りにしか動かないため、的確な指示を出す必要があります。基準が明確で、コンピューターには例外や曖昧などの概念がありません。発達障害を持つ子どもたちの世界観とよく似ているため、多くの子どもたちが学びを楽しむことができます。
プログラミング学習に取り組むうえで、はじめにプログラミング的思考についての説明をしていきます。社会に出て、なにかプロジェクトを行う際、その目的に必要なタスクを分解すること。どのような順序でスケジュールを組み立てていけばより効率的でスムーズにプロジェクトが完結できるか考えること。様々な場面で活用することができ、将来どんな職業に就くとしても、普遍的に求められる力です。
論理的思考とプログラミング的思考は厳密には違うものです。論理的思考は、その順序が「効率的」であるとは限りません。 プログラミング的思考は、論理的思考を活用したうえで効率的で最適な手順を考えることです。つまり、論理的思考の中に、プログラミング的思考が内包されています。
プログラミング的思考を意識して行動することで効率のいい動きができます。子どものうちからプログラミング的思考を身につけることで、「目的」と「過程」を明確にする力が身に付きます。プログラミング学習は、自分の好きなものからスタートすることができます。好きなものからスタートすることで、取り組みやすく、子どもの特性を伸ばすことができます。例えば、車が好きな子がサーキットコースを走るアニメーションを作ったり、好きなアニメのキャラクターが動くゲームを作ったりすることができます。自分が興味のあることを通して、プログラミングを学ぶことができます。
落ち着きがないといわれる子でも、熱中できるものを見つけたときは、ものすごく集中力を発揮することがあります。ゲームやアニメがいい例かもしれません。宿題はなかなか取り組まないけど、ゲームは熱心にするという子も多いのではないでしょうか。もしこのような特性であれば、プログラミング学習はおすすめです。ゲームの要素もあるプログラミング学習を通して、学びを楽しむことができます。
あまりコミュニケーションが得意ではなく、自分の気持ちを表現するのが苦手な子も多いのではないでしょうか。プログラミングの作品を通じて、自己表現する楽しさを知ることもあります。自分で組んだプログラムにより、オリジナルの作品を作ることで達成感を味わうことができます。一歩ずつ確実にできることが増えていくので、自己肯定感が高まり自信を持つことにもつながります。
プログラミング学習は、発想力や考える力を身につけて伸ばしていくことができます。読み書きや計算が苦手でも、必要最低限の文字入力で学びを深めていくことができるため、自分にあった能力を活かすことができます。自分のペースで作業を進められるプログラミングは、自分の思い描いた設計図に沿って自分のペースで作業を行うことができます。自分でペースを調整する経験は、将来働くようになってからも大切な能力となります。
プログラミングの学習に関しては、独学でもできます。しかしながら、始めから独学ですと難しく感じることもあると思います。興味を持たせるという段階においては、療育のサービスを利用して学習のきっかけにしてもらうのも良い方法ではないでしょうか。
発達障害のある子は能力の偏りがある場合が多く、国語や算数といった主要教科だけでは、なかなか自信が積みあがらないことがあります。プログラミングは学んだ知識やスキルを使って、自分でゲームやアプリを作ることができます。たどり着く答えが1つではないため、本人が進めた計画や作業に対しての達成度や完成度を確認できます。子どもたち一人ひとりにあった内容で、学習に取り組めるため、自分の取り組んだ内容が褒められる経験にもつながります。
取り組んだ内容の成果が分かりやすいプログラミングは、発達障害のある子にとって、取り組みやすく自信にもつながりやすい学習内容になります。